アート・ミーツ・メディア:知覚の冒険

http://www.ntticc.or.jp/Schedule/2005/art_meets_media/index_j.html
東京オペラシティで開催中の「アート・ミーツ・メディア:知覚の冒険」へ。
アートというと堅苦しい印象があるけれど、今回の展示では体感型の作品が多く、なかなか面白かった。
その中でも、印象に残った作品の感想を少し。

  • 「AUDIBLE DISTANCE」前林明次

http://www.ntticc.or.jp/Schedule/2005/art_meets_media/Works/work10_j.html
ヘッド・マウント・ディスプレイとセンサーシステムを装備し、三人一組となって真暗な空間に入る。他の人の存在はディスプレイ上で移動する球状のグラフィックスと,自分の心拍によるパルス音で確認。
普段、自分の知らない人と知っている人との区別は、その人の外見を見ることで判断している部分が大きい。知らない人に近づかれた場合、なんとなく圧迫感を感じ、無意識にある程度の距離(物理的な意味で)をとろうとしてしまう。逆に知っている人の場合は、近くにいてもそういうことを気にすることはない。
この作品は、一緒に付き合ってもらった人と自分、もう一人は全く知らない人の三人で体験したのだけれど、この組み合わせはなかなか面白かったと思う。
知っている人、知らない人の区別なく自分以外の人は単なる球状のグラフィックスとして表現されるため、見えているグラフィックスの人が自分の知っている人か知らない人かの区別が出来ない。そのため、無闇に相手に近づくことが出来ず、どうしても距離をとろうとしている自分というものを実感させられる。恐らく、自分の知っている人が一緒に居なかったら、動くことさえ出来なかったような気がする。
これが三人とも知っている人同士ならば、わざと近づいていったりという遊びもでき、また違った印象になるのかもしれないけれど、知らない人が一人いるだけで、こうも尻込みしてしまうとは・・・。改めて自分の他人に対する距離のとり方、接し方を考えさせられてしまった。

  • 「VinylVideo」ゲープハルト・ゼンクミュラー

http://www.ntticc.or.jp/Schedule/2005/art_meets_media/Works/work05_j.html
アナログレコード盤に音声だけではなく映像も記録。それを再生して鑑賞できる作品。やはり入れられる情報量に限界があるのか、映像はモノクロで単調な動きの繰り返しの物が多かったけれど、レコードと同様にピッチを変化させることによって、音だけでなく映像の速度が変化するもの面白い。
レコードは音を聴くための物、という既成概念を破り、新たな側面からレコードというものを見せられた感じで興味深かった。

http://www.ntticc.or.jp/Schedule/2005/art_meets_media/Works/work02_j.html
机の上に広げられたヴァーチャルな絵本に描かれている絵を触ることによって、現実世界で音が鳴ったり、ライトが点灯するなど、目で見るだけではなく、体感できる作品。絵を触ると何が起こるのだろう、という好奇心をそそられる。絵に対する行動の選択肢が複数あったりしたら、もっと面白いかもしれないな。
その他にもスクリーンに映し出されたバーチャルな世界を自転車で動き回れる作品や、自分自身をアンテナとしラジオなどを受信、その音を聴く作品、現実世界の人からの追跡をバーチャル世界の中で逃げ回る鬼ごっこ的な作品などなど。
どれも面白かったけれど、こういう参加型の作品鑑賞は誰かと一緒に行った方が楽しめるということを実感。
ちなみに、展覧会とは関係ないけれど、同じフロアにある簡単なアニメーション製作ができるワークショップも面白かった。時間と根気があれば、かなりな作品ができるかもしれない。